タヒチ・タプタプアテア(Taputapuatea)のマラエ

せっかくタヒチに行ったのだから、何か残しておきたいと思って、Taputapuatea(タプタプアテア)のマラエについて聞いたこと、感じたこと、調べたことを書いておこうと思います。
私たちがレースのために滞在したのは、フレンチポリネシア=タヒチのソシエテ諸島にあるライアテア島。フレンチポリネシアで2番目の広さをもつ島。何世紀にもわたりソシエテ諸島だけではなくポリネシア全体の宗教と文化の中心地でもある場所なのだそう。この島は伝統的に反中央意識が強く独立心が旺盛、タヒチを中心とするポマレ王朝がフランスに滅ぼされたのちも最後まで抵抗をつづけたのがこのライアテア島だったそうです。
ライアテアは現地の言葉で「遥かなる楽園」「柔らかな光の空」という意味。
かつては「神の揺りかご」という意味の「ハヴァイキ(Hawaiki)」と呼ばれていて、太平洋に移住した最初のポリネシア人たちの故郷だと伝えられています。
考古学の研究では、ハワイ諸島やアオテアロア(ニュージーランド)の主なマオリの移民、ラパヌイ(イースター島)などのネイティブは、すべてライアテアから旅立った人々とされています。
そのため、ライアテア島にはマラエやペトログリフなど、歴史・文化を今に伝える考古学的遺産が豊富だとか。
そして、そのライアテア島にあるのがポリネシアン・トライアングル最大・最古の国際的マラエである「Taputapuatea(タプタプアテア) のマラエ」。マラエは「祭祀場」という意味です。
このタプタプアテアのマラエは、ポリネシアンの先祖達がマナ(MANA=神聖な力)が宿ると信じ、それはそれはたくさん石を敷き詰めて造り上げた宗教的・政治的権限の神聖な禁制地。ここでは、王族の就任式、政治協定の締結、さらには国際会議が執り行われ、そして今でも、ハワイ、ニュージーランド、クック諸島のコミュニティーが、この地を巡礼します。先祖の魂が宿るポリネシアで最も神聖な場所であり、精神的なそして文化的な故郷として。ハワイ文化復興のシンボルでもあるホクレアが立ち寄ったことでも有名な場所です。マオリとかもかなり熱心に通っているようですよ。
なぜこの地が最も神聖な地となったのかというのは、このマラエがあるオポア地区が、創世神タンガロアの息子であり、戦いの神でもあるオロ神の産まれた場所だということで、あるタフア(神官、ハワイではカフナ)が一種の宗教改革をおこなったので、このマラエの格が上がったからだそうです。 タンガロアはハワイではカナロア=海と海風の神様のことだよね。

看板〜マラエの全体像。

かなり大きな石

山も神秘的

わたしたちをこちらに案内してくれたYOさんがマラエで話してくれた地元のアンクルから聞いた伝説によると…
このマラエには生贄が捧げられていました。
花などだけではなく、動物や人間ということもありました。
このまん中の写真に写っている私達が囲んでいる背の高い石。
この石よりも大きな人間は処刑を免れたのだとか…でも、こんな大きな人間が居るはずもなく…ですよね。処刑は、生贄が寝ている間に行われたようです・・・すべてもの恩赦なのかな…。
また、最初にあげた写真には、タプタプアテアのマラエの向こうに小さな島が浮かんでいるのですが…そこから罪人や権力に反抗する人を海に浮かべて並べ、王様がその島から歩いてマラエまで渡ったという話もあるのだとか。
ワニ(=サメ)をだまして並べて海を渡った因幡の白ウサギのような話ですが、そういう話で当時の王様の権力を人々の心に植え付けたのかもしれませんね。
タプタプアテアにはこの地を説明する看板もあったのですが、英語やフランス語などで書いてあるので私にはよく理解できませんでした。YOさんによるとタヒチアンのアンクルから教えられた話とは違うことも書かれているようで、征服者によって塗り替えられた事実というものが、ここにも存在するのだな~ということが判りました。
そして、その看板には日本とポリネシアのかけ橋にもなった亡き篠遠博士のことも書かれており、あらためてご冥福と感謝の気持ちをこのマラエで伝えました。

今でもたくさんの供物が捧げられている

方角を示しているのかな??

アフ(祭壇)マラエがマラエたる由縁

そして、マラエの石を少しでも動かすと災いが起こるらしいです。
マラエには石が積まれたアフ(祭壇)があるのですが、アフには立ち入り禁止です。でも、祭壇の前にある石はマラエを造った人の家系を象徴していて、儀式参加者の背もたれにもなったそうなんです。
あと、このマラエにはたくさんの木があって私達も落ちていたマンゴーを拾って食べたりもしたのですが、この木々の中には「Ati(アティ)」という木がありまして、その木になる実から採取出来るのがポリネシアンの万能オイルの誉れも高い「Tamanu Oil(タマヌオイル)」なのだそうです。
このタプタプアテアには、他にもたくさんの神殿があり、たくさんの供物が捧げられている場所もありました。そこの前に立つと、なんか気持ちがザワザワしました。他にも前に立つとすごい身体が熱くなる場所もありましたよ。それぞれのマラエの役割や人々が託した想いとか、人の揺れ動く気持ちとか、期待感とか、そんなことを感知したのかもしれませんね。
でも、ハワイの人身御供のヘイアウ(神殿)に行くと、なんとも異様な気配を感じたりするのですが
タヒチのこのマラエは人間や動物が生贄として捧げられていたわりには、なんともオープンで爽やかで、いやな気配がまったく感じられなったのが不思議。でも、畏敬の念としかいいようのないものが心の底から湧いてくる場所でしたが…、すごい人こそ、さり気なくその場に居るような、そんな感じなのかな。
私たちもアフの前で手をつなぎ、御神酒で場を清めて、いつも海に出る時のように、レースの無事をお祈りさせていただきました。じつは、今年の私たちが出たレースのコースも、このタプタプアテアの前を通っていて、通過する時に再度感謝の気持ちを伝えたんですが、そのあと潮の流れにうまく押されて、神さま達が応援してくれたんじゃないかなー、なんて都合よく解釈してます(笑)
このタプタプアテアのマラエは、まだ修復途中のものもありますが、2017年7月9日にユネスコの世界文化遺産に正式に登録されました。
タヒチ全体の印象としては、「通りが良い」っていうんですか…。
余計なものがない分、人間が人間の正統な力をキャッチして動けるっていうのかな。
良いも悪いもなく、あるがままを受け容れるっていうんですかね。
とにかく、受け皿が大きくて、レスポンスがすぐに来る場所。
そして、静かに静かに色々なものが染み透っていく…そんな感覚が味わえる不思議な魅力のあるところ。
タヒチでは、たくさんの人がわたし達に手を差し伸べてくれて、奇跡のような体験を何度もしましたが、でも実はこれってタヒチほどではないにしても日本でも起きていることだったりします。特に不便な場所に1人旅していると出会う光景だったりします。日本の都市部はあまりにも便利過ぎたり忙しすぎたりで、自己解決が当たり前の世の中になってる。だから、他人の不便さとか、そういったことに思いが至らないんだろうな…と、日本に戻り、自戒も込めて、通勤電車の中で家電のCM映像を眺めていたら、そんな思いに辿り着きました。タヒチは、そんなことにも気づかせてくれる場所です。
また行きたいかというと…行きたいような行きたくないような、でも、行かざるを得ないというか、またすご~く行きたくなってしまう…そんな場所になる予感がしています。
参考サイト
①⇒THE ISLAND OF TAHITI(タヒチの島)
②⇒タヒチ情報
③⇒tahiti.Guide